建設業許可の「営業所技術者等」とは?要件・種類・兼務の特例を解説

建設業許可を取得・維持するためには、すべての営業所に「営業所技術者等」を専任で配置することが法律で義務付けられています。
なお、以前は「専任技術者」と呼ばれていましたが、令和6年の建設業法改正により、一般建設業許可の営業所技術者等は「営業所技術者」、特定建設業許可の営業所技術者等は「特定営業所技術者」と呼ばれることになり、これらの総称が「営業所技術者等」です。
営業所技術者等の役割
建設業法では、建設工事の目的物および施工の特殊性から、発注者が建設業者の技術力を信頼し施工を委託する特性があります。このような特殊性を踏まえ、適正な施工を確保し、発注者を保護する目的で、一定の能力を有する技術者を営業所に配置することが義務付けられています。
営業所ごとに技術者を専任で配置することにより、営業の実態に技術力が伴うことを担保するとされています。
「一般」と「特定」|営業所技術者等の種類と資格要件
営業所技術者等は、取得する建設業許可の種類(一般・特定)によって、求められる要件が異なります。
種類 | 対象となる許可 | 資格要件 |
---|---|---|
営業所技術者 | 一般建設業許可 | ・国家資格(2級以上など) ・学歴+実務経験 ・10年以上の実務経験 |
特定営業所技術者 | 特定建設業許可 | ・国家資格(1級のみ) ・指導監督的実務経験 ・国土交通大臣認定 |
1. 一般建設業の「営業所技術者」の資格要件
以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
資格区分 | 学歴・資格 | 実務経験年数 | 追加条件・備考 |
---|---|---|---|
指定学科修了者 | 高校卒業 | 5年以上 | 在学中に指定学科を修了していること |
大学(短大等)卒業 | 3年以上 | 在学中に指定学科を修了していること | |
専門学校卒業 | 5年以上 | 在学中に指定学科を修了していること | |
専門学校卒業 (専門士・高度専門士) | 3年以上 | 在学中に指定学科を修了し、専門士または高度専門士の称号を有すること | |
実務経験者 | 学歴不問 | 10年以上 | 許可を受けようとする建設業に係る建設工事の実務経験 |
国家資格者 | 1級国家資格保有者 | なし | 建設業に関連する国家資格(1級) |
2級国家資格保有者 | なし | 建設業に関連する国家資格(2級) | |
複数業種経験者 | 学歴不問 | 規定による | 複数業種に係る実務経験を有する者として認められる者 |
技術検定合格者 | 1級1次検定合格者(○○技士補) | 3年以上 | 大学(短大等)指定学科卒業者と同等扱い ※指定建設業7業種・電気通信工事業は適用除外 |
2級1次検定合格者(○○技士補) | 5年以上 | 高校指定学科卒業者と同等扱い ※指定建設業7業種・電気通信工事業は適用除外 |
2. 特定建設業の「特定営業所技術者」の資格要件
特定建設業の許可における特定営業所技術者の資格要件は以下のとおりです。
資格区分 | 資格・経験 | 詳細要件 | 指定建設業7業種での適用 |
---|---|---|---|
国家資格者 | 1級国家資格保有者 | 建設業に関連する国家資格(1級) | ○ 適用可能 |
指導監督的実務経験者 | 一般建設業の営業所技術者要件を満たす者 | 請負代金4,500万円以上の工事で2年以上の指導監督的実務経験 ※発注者から直接請け負った工事が対象 | × 適用不可 |
国土交通大臣認定者 (大臣特別認定者) | 特別認定講習合格者または大臣考査合格者 | 指定建設業7業種に関する特別認定講習の効果評定合格者 または国土交通大臣が定める考査合格者 | ○ 適用可能 |
※指定建設業7業種:土木、建築、電気、管、鋼構造物、舗装、造園
「専任」要件の詳細
営業所技術者等は、原則としてその営業所に常勤し、専らその職務に従事する「専任」の者でなければなりません。
そのため、以下に該当する人は、原則として専任とは認められません。
- 住所またはテレワークを行う場所が、営業所から著しく遠距離にあり、常識的に通勤不可能な者。
- 他の営業所(他の建設業者の営業所を含む)において専任を要する者。
- 建築士事務所を管理する建築士、専任の宅地建物取引士などの他の法令により特定の事務所などにおいて専任を要することとされている者
(ただし、建設業において専任を要する営業所が他の法令により専任を要する事務所等と兼ねている場合において、その事務所等において専任を要する者を除く) - 他に個人営業を行っている者や他の法人の常勤役員である者など、他の営業等について専任に近い状態にあると認められる者。
令和6年建設業法改正による兼務の特例
建設業界の人手不足解消のため、一定の条件下で、営業所技術者等が工事現場の技術者(主任技術者・監理技術者)を兼務できる特例が設けられました。
兼務が認められるには、主に以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 対象工事: 請負金額が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)。
- 兼任現場数: 1現場のみ。
- 距離: 営業所と現場が1日で巡回可能な距離(移動時間がおおむね2時間以内)。
- 体制: 施工体制の確認ができるICT環境(Webカメラなど)が整備されていること。
- 連絡員: 監理技術者等との連絡調整を行う連絡員を現場に配置すること。